ガン新薬 キムリア


 

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ガン新薬「キムリア」(Kymriah)が日本でも承認される方向だというニュースが今年の2月にあった。朗報である。

2017年、米国でFDAが承認。2018年、ECが承認、そして、2019年、日本で承認となったもの。

 

これは、スイスに本拠を置く世界的な製薬会社ノバルティス社(Novartis International AG))が開発したもので、適応症は、血液のがん(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病ほか)。

 

この薬が画期的なのは、難治性のリンパ腫でも53%の完全寛解をみていること、さらに若年性白血病に関しては80%近い完全寛解というデータが認識されているということ。

 

キムリアは、CAR-T細胞医療のがん免疫治療薬。患者の血液から取り出したT細胞をCAR技術を用いてT細胞の再プログラム化を行い、その再プログラムされたT細胞を患者に輸注して戻すとCAR-T細胞は標的であるがん細胞を認識して攻撃する。単回投与(投与は1回のみ)による治療。再プログラムは個々の患者にあわせて製造されるというカスタム・タイプなため非常に高価。すでに実用化が行われていている米国では、1回の治療費が約500千ドル(約5千万円)とのこと。

 

CAR-T細胞
・ CAR: キメラ抗原受容体 Chimeric Antigen Receptor,略称CARは、遺伝子編集を行うことで工学的につくられる人工の受容体。
・ T細胞: リンパ球の一種。胸腺(Thymus)で分化する免疫担当細胞であることから、T細胞(T-cell)と呼ばれる。ちなみに、他のリンパ球としては、B細胞は骨髄(Bone marrow)由来であることからB細胞と呼ばれ、NK細胞は、ナチュラル・キラー細胞がある。


現在、対象者はびまん性大細胞型細胞リンパ腫(DLBCL)は成人、白血病の場合は25歳以下とされているが、あと数年すれば技術が進み、さらに対象者の枠が広がることだろう。現在は治療代金が5千万円と高価であることがネック。日本国では国民医療保険があり、かつ、高額療養費制度の適用があれば、患者の自己負担学は百万円程度になると見込まれているとのこと。しかし、自己負担はそうでも、薬価が5千万円であることになんの変わりもないので、差額は誰かが支払うことになる。それは、健康保険であり、健康保険システムを圧迫するのではないかという見方もあるようだ。そして、健康保険は、国民の税金である。もっとも、薬価は開発当初は高価でも、徐々に下がって行くので、何年かすれば、状況も少しは変わることだろうが。

わたしは、親しい人を「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」で失っているので、この薬があと6年早くあったら、と思わずにはいられない。

抗AIDS治療である「カクテル療法」が、もし、あと数ヶ月早く紹介されていたなら、Freddie Mercuyは死なないですんだ、というのと同じことで、歴史に「もし」は無いのだけれど。