『ハドソン川の奇跡』


SULLY(日本語題は『ハドソン川の奇跡』)を初日に鑑賞。

2009年1月、ニューヨークのラ・ガーディア空港をシャーロットに向けて離陸した直後にバード・ストライクにより2基あるエンジンが両方とも停止、操縦不能となったエアバスA320旅客機を最小のインパクトでハドソン川に不時着水させ、乗客と乗員の合計155人すべてを救った奇跡のような出来事と、その後の国家運輸安全委員会による調査でのやり取りについて、 機長 Burnett "Sully" Sullenbergerの手記「Highest Duty 」に基づきクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演による映画化。

1/15/2009、ラ・ガーディア空港を離陸直後にバード・ストライクによりエンジンが停止、US Airway 1549は飛行を続けることが不可能になった。ラ・ガーディア空港に戻る選択肢、NJ州のローカル空港に不時着する選択肢が考慮されたが、どんどん速度と高度が下がりこのままでは墜落しそうで、どちらの空港へも到着する可能性が無いと分析した機長はハドソン川に不時着水という決断をする。失敗したら米国でもっとも人口密度の高いNY市マンハッタン地区に墜落し想像を絶する被害が生じるが、サリー機長は着水可能と判断。

ジョージ・ワシントン・ブリッジをかすめハドソン川に沿って南下。 機内アナウンスで「Brace for impact」(衝撃に備えよ)と一言、あとは正しい角度で着水するための機体の制御に集中する機長。 48丁目で見事に着水。非常出口から脱出する乗客たちは、ハドソン川に運行中だったWaterway(フェリー)により直ちに救出され陸地に運ばれた。

機長は一気に全米のヒーローとなりマスコミの寵児にもなりテレビで彼のニュースを見ない日はなくなった。 しかし、自宅の周囲は常にたくさんのTV取材クルーや車に囲まれているし、機長自身もパルスや血圧上昇、睡眠障害が出て大きなストレスにさらされる。

国家運輸安全委員会(NTSB)による調査が始まった。 不用意に乗客を危険にさらしたのではないか、ラ・ガーディアに戻れていれば機体の損傷もミニマルで済んでいたのに戻らなかった理由はなぜなのか、と激しい追及をうけることになる。委員会が依頼した航空会社や航空専門家によるコンピュータ分析やフライト・シミュレーターによる分析結果はラ・ガーディアに戻れたというものだった。
陸上に不時着していれば航空機の水没もないので後始末のコストも桁違いだ。保険会社だって着水はうれしくない選択肢だったというわけだろう。

安全委員会の決定次第ではサリーはパイロットの資格を失う可能性だってある。サリーの対応は・・・


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非常によくできていた。
トム・ハンクスは「普通のオトコが普通じゃない事態に遭遇して活躍する」という彼の得意な役どころを見事に演じている。オスカーにノミネーションされるだろう。クリントの監督は、いつもの様なクリントらしさは見られなかったもののうまくまとまっていて、見ごたえあり。

これはニューヨーカーのための映画だなあ、我々「地元」の人々の見方とそれ以外の人々のこの映画に対する見方はちがうかもしれないと思った。
(マンハッタンの上を低空飛行してきた旅客機の事故や事件というのは911と比較してしまい、犠牲者がゼロというところに明るい気持ちになれる出来事だった)


ハドソン川に着水する周囲のNY市マンハッタンの景色が現在のものだったことに驚いた。すなわち、事故のあった2009年当時には無かった新しい建造物やスペースシャトルのディスプレーなどが気にせずその映ったままなのだ。CGでいかようにも加工できただろうに、意図的にそのままとしたのがクリント・イーストウッド監督の好む「リアリティー」なのだろうか。